05. History of Merck 2
火曜日, 2月 27th, 2007
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Merckの功績と歴史を振りかえりながらシーン全体の考察も試みようという本コラムですが、長大な原稿になってしまったので連載形式でお届けです! 第2回の今回は、2003年〜2004年にかけての、多様化し幅を持ち始め一大レーベルへと成長していったMerckの活動を追っていきます。 |
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5. ポストロック的アプローチ: Tiki Obmar & Lateduster 2003年〜2004年、“レーベル第二期”とも言える時代に突入した。そう思える理由のひとつに、レーベルの音楽性が多様化したことが挙げられる。その印象を広げた作品としてまず挙げられるのが2003年にリリースされた、Tiki Obmarの『High School Confidentioal』であろう。Tiki Obmarは、3人組という、これまでMerckにはなかったバンド編成で注目を集めた。この時期、様々なエレクトロニカ・レーベルがそうであったように、ロックやフォークなどのアプローチをMerckも打ち出したのだ。サウンドはバンド・アンサンブルとエレクトロニクスを用いたしなやかな表現で、時にはエレクトリックビートも交えたサウンドを聴かせるというものだ。Tiki Obmarは、レーベルの中で最もバンド的なアプローチの側面が強かったと言えるだろう。この作品を機に、Merckはポストロック的なアーティスト、そしてファンをも取り込むことに成功した。それは、ポストロック派として挙げられるもう一つのバンド、Latedusterの登場によって決定づけられる。 Latedusterは、現在はAnticonからリリースしておりルーピング演奏で人気のDoshことMartin Doshと、その良き相棒であるFogことAndrew Birdも在籍し、ギター、ドラム、ターンテーブル等をマルチに操る4人組によってミネアポリスで結成されたバンドである。2004年にリリースされた『Easy Piece』は元々は Firetruck Recordsというレーベルから5曲入りでリリースされており、それに3曲プラスして新たにリリースし直したものである。本作は、後のDoshサウンドに繋がる作品で、現在のDoshの、バンド編成時における前身バンドといってもおかしくないほどであり、現在のDosh人気を考えると、重要な位置を占める作品であることは間違いないであろう。ただ、残念ながら現在はLatedusterとしての活動はしていないようだ。 |
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6. 新たな才能: Heliosの登場 先にも述べたが、ポストロックへのアプローチと同様に、エレクトロニカ界では世界的にアコースティックやフォークを融合したサウンドが主流となっていゆくのだが、Merckあまりその道へは向かおうとはしなかった。ただし、後にポストロックそしてフォーク・エレクトロニカの代表的なアーティストとして成長するHeliosを真っ先にリリースしたのもMerckだった。2004年のデビュー作『Unomia』で彼は、ポストロック的なイマジネーションをエレクトロニカのフィールドで表現するという命題をなんなくクリアしてしまう。Heliosと名乗るKeith Kennifという青年の才能にとっては、これは序章に過ぎなかった。そのことは、のちのGoldmundやSonoとして発表したクラシカルな要素を内包した作品を聴けば分かるはずだ。 |
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Helios aka Keith Kennif
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7. ヒップホップ/DJ的アプローチ: Deceptikon 一方、マイアミのシーンにあって、ここまでエレクトロニクスなビートを追求し続けるMerckは、レーベルとしてもとても貴重な存在であったが、Deceptikonの『Lost Subject』の発表で、Merckはヒップホップへも柔軟になるのである。エレクトロニカと言える要素は保たれるも、基本にはヒップホップが確実に感じられるビート・プログラミングで、新たなビート・ジャンキーを虜にした。Merckがヒップホップへ向かうのはごく自然なものに感じられ、これまでそうしてこなかった方が不思議なくらいである。 それと同時に、この頃から12インチ・リリースにも積極的になっていく。Merckの12インチにはCDには未収録のリミックスが多く収録されており、DJユースにも対応してる姿勢は他のエレクトロニカ・レーベルにはないポイントであり、大きく評価されるべきことであろう。それと、DJユースといえば、レーベルの音源を用いてミックスしたDJMIX-CDシリーズもこの時期始められている。レーベルの音源を手っ取り早く聴けてしまうこのシリーズはDJ以外からも人気があり、お買い得プライスも手伝って、今ではレアな作品となっている。ちなみに、レーベルのオフィシャルDJであるPhonokがミックスしたVol.2が、このシリーズの最高傑作であると多くのリスナーの間で意見が一致している。ただし現在では入手不可能という残念な状況なのである。 |
Deceptikon
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8. 量産期: 一大エレクトロニカ・レーベルへ この時期、レーベルは量産期とも言える時を迎えていた。ポストロック的なアプローチをする傍ら、Merckとしてのこれまでのスタンスを変えることなく、様々な作品を送り出すのだが、ひとつ興味深く、密かに進められていた新しい要素としては、他のレーベルからリリース経歴のある、ある意味ベテラン勢のリリースにも積極的であったことが挙げられる。例としては、冒頭で述べたClearレーベルの生まれ変わりとして活動していたFocus〜deFocusからリリース経験のあるEsemとLacklusterや、同じくUKの古株レーベル、ToytronicからリリースしているMr. Projectileを招き入れたのだ。理由としては、そのdeFocusがレーベル休止に追いやられたこともあるだろうが、それよりも彼等のような純正エレクトロニカと呼べるようなサウンドを受け入れるレーベルが他に少なく、特にヨーロッパでは方向性を変えたり、減少していくことが大きく影響していたかも知れない。つまり、Merckは気付いたら、世界的に見てもエレクトロニカ・サウンドの主要な受け皿へと成長していたのだ。 その他にも、新人のアーティストもさらに発掘し、現在ではKettelと並ぶ、オランダ・エレクトロニカ・シーンでは欠かすことのできない存在に成長したSecedeや、フィンランドからはBlamstrain、そしてアメリカ勢からはLandauなどのリリースを畳み掛け、それと同時に、初期から在籍しレーベルの屋台骨であるProem、 Proswellといった面々も新作を発表している。そしてどういう訳かこの時期にはコンピ作品が集中していて、その中にはXelaやTwerk、 SenseといったMerckからのアルバム・リリースはない有名なエレクトロニカ・アーティストが参加したりしている。中でも、2004年にリリースされたIlkaeのリミックス・アルバム『Bovine Rearrangeent』はレーベルの歴史の中でも欠かせない作品だ。このリミックス作品へ楽曲を提供したアーティストは豪華を極める。SecedeやKettelを筆頭に、後にMerckからもアルバムをリリースするTim Koch、レーベル内からはHelios、MD、Proem、 Proswellと、ここまでは比較的予想できる範囲内だが、驚くのは、同じくアメリカを拠点にしてきたレーベル・SchematicとKracfiveからo9とOctopus Inc.、同じくエレクトロニカ・シーンの同胞である、ドイツの名門Morr MusicのISANも参加しているのだ。これは彼らが唯一Merckと接触した作品であり、同じくUS勢のDaedelusが参加していることも注目すべき点であろう。そして、Merckジャパンツアーで交流を深めたJoseph Nothingも2曲リミックスを提供し、同じく日本勢からShexも参加していることも忘れてはならない。つまり、Merckへの世界的な規模での信頼のほどがうかがえ、レーベルは確実に成長を続けて行くのであった。 そして、この時期もう一つ大きな変化があるですがそれはまた次回としましょう。そして、またアイツがやってくるのであった……。(つづきます、次回をお楽しみに!) |
Lackluster
Secede
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Text: 柳沢祐至(warszawa) |
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